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なぜ模型をつくるのか

2001/8/30 たかまさ



なんでおれは模型にこんなに惹かれるんだろう。こどもだからかな。

と思っていたところ、最近、株式会社タミヤ社長、田宮俊作さんが書いた本「田宮模型の仕事」を見つけ、夢中になって読んだ。そして、かなり気持ちがすっきりした。

田宮俊作 著
「田宮模型の仕事」
文春文庫 2000年5月発行

田宮社長は疑問を投げかける。

いうまでもなく、模型は生活必需品ではありません。となると、模型は社会のなかで、人の心のなかで、どんな役割を果たしているのだろう……という疑問に突き当たらざるをえません。

これこれ!これが疑問なんだ!
模型作りなんて、所詮は道楽。だから、模型に関心のない人から「無駄なことに金つかって!」と言われちまうのも仕方のないことなんだろうか。
模型は無意味なんだろうか。やめたほうがいいんだろうか。

田宮社長は答えてくれた。

私はときどき「模型ってなんだろう」と、考えることがあります。私自身もふくめて、なぜ模型ファンはこんなにも夢中になってしまうのでしょう。
その理由のひとつは、まず「工作」としてのおもしろさがあると思います。自分の手で組み立て、だんだんカタチになっていくのは理屈ぬきに楽しいものです。さらにパーツに手をくわえディテールアップさせると、より現実感のある模型に仕上がり、この世にひとつしかない「作品」となるのです。
もうひとつは実物への“思い”が、模型に投影されているのではないでしょうか。当たり前のことですが、自分に興味のない種類の戦車を作るひとはいないと思います。
このことはモデルカーだと、もっとはっきりしてきます。実際に売れている自動車を模型にしたら売れるか……といったら、決してそうではありません。いわゆる大衆車を模型にして発売しても、さほど売れないのです。それは大衆車にたいしての「あこがれ」が弱いからです。“生活の足”として乗る車と“あこがれの車”というのは、ちょっと違うようです。やはり模型の世界には「夢」のようなものが、託されているのかもしれません。
そして、もうひとつ。これはジオラマ人気が高まってきたときに感じたことです。
模型をディスプレーして見る角度は、ななめ上からです。あなたはジオラマを見るとき、雲の上からながめていつように感じたことはありませんか。
  (略)
模型は1/35や1/20にスケールダウンしたものです。しかし逆にとらえれば、私たちが35倍、20倍の巨人になったと、考えることができます。戦車をひょいと手に取り、裏返して車底のエスケープハッチ(脱出口)を観察できるのも、模型ならではのおもしろさでしょう。模型の世界……それは私たちに「神様の視点」をあたえてくれるものだと思うのです。

夢!!
そう、おれは、模型に夢を託していたんだ。
夢がないっていうのは、非常にさびしいことだと思う。おれはずっと夢を持ちつづけたい。

ほんとに模型が好きな田宮社長、こんなことも書いている。

私自身、趣味で模型づくりをたのしんでいます。子供のころから模型が好きでしたが、それは供給する立場になっても変わっていません。仕事に追われ、なかなか模型を作る時間はとれませんが、たまにフッとスケジュールに合間ができることがあります。そんなとき、模型好きの虫が騒ぎ出し、無性に作りたくなるのです。
細かい手仕事は気力を一点に集中するので、日常のわずらわしいことも忘れることができます。けっこういいストレス解消になり、没頭する楽しさがありました。

おれは最近、同僚といっしょに、仕事の合間に模型をつくっている。
そんなおれたちを冷ややかな目で見る人たちがいる。わかってない人たちだ。
また、おこづかいで模型を買っていることを、奥さんに言えずにいる仲間がいる。勇気を出して夢を語ってみればいいのに!
田宮社長も、仕事の合間に模型を作っている!胸をはろう!男には模型が必要なんだ!
でも、仕事するときはきっちり仕事する。そのへんはきちんとメリハリつけよう。

解説では、エコノミストのリチャード・クー氏が、模型に関するエピソードを語っている。

大学院に進んで学業が忙しくなると、ひどくストレスが溜まるようになった。私は弟に電話した。私と一歳違いの弟は、やはり私と同じ筋がね入りのプラモデラーだったが、当時は医学部で精神医学を学んでいた。その弟にどうしたらストレスを解消することができるのだろう、と聞くと、弟は「人間が本当にリラックスできるものというのは、そんなにあるものではない。それはせいぜいひとつかふたつで、しかも人によって異なる。それを見つけるのがストレス解消の第一歩だが、最近の学説によると、子どものころに楽しんだものは、大人になってもリラックスできることをさがす大きなヒントになる」というのだ。
そして私はまたプラモデルを作り始めた。そのころのストレスがプラモデル作りによって雲散霧消してしまったわけではないが、かなり緩和させることができたのではないか。これからも私は子どものときの心を忘れずにプラモデルと付き合っていきたい。

なんと、精神医学の話まで飛び出した。
模型をつくってリラックスしてストレス解消!こんなにすばらしいことがあるだろうか!
これからもおれは子どものときの心を忘れずに模型と付き合っていきたい。

というわけで、D.I.E.大学こども学部では、研究ネタとして「模型」をとりあげます。
まずは、ラジコンカーからいきます。
よろしく。