毎年、空手部には夏合宿がある。地獄の夏合宿が……。
合宿には同じ県内の数校が集まって一緒に修行を行う。
そして、その場所は何故か毎年うちの学校だった。(謎)
合宿は2泊3日で、いちばん収容人数が多かった柔道部の道場を借りてやっていた。
正直、空手は板の間でやるもんなのだが、柔道部の畳の間だといつもと勝手が違う。蹴力が畳に吸収される感じだ。今考えると、それも修行のうちだったのかも知れないが……。
うちの空手部は、全部で約20人(中1〜高2)なのだが、夏合宿の間は総勢100人くらいになる。
いつもやっている練習前の筋トレが地獄と化す。普段は20人が一つの円になり、一人ずつ回数を数えながら、全員が数え終わるまで、腕立て、腹筋、スクワット……を行う。当時、全部で何セット何回やっていたかは忘れたが、当然それぞれ100回以上はやっていた。それが夏合宿の間は、その100人が一つの円になって筋トレするので、腕立ての回数は、果てしなく続く天竺状態になる。
ペアになって一人を肩にのせ、一人がスクワットをする。しかし、人数が偶数ちょうどじゃないので、一人があふれる。その一人が私だった。相手がいない奴は、サンドバッグを担いでスクワットをしなければならない。私はサンドバッグを担いでスクワットをしながら、「今、俺が一番輝いている」と勝手に自己陶酔していた。(空手部はこんな奴ばっかり)
地獄の午前練習が終わり、昼飯の時間になる。しかし、何も食べられない。ひたすら水ばかり飲み、食べ物はのどを通らない。気持ち悪くなる。けど、食べないと午後の練習についていけないので、無理やりねじ込む。
そして、午後の練習も終わり、あとは寮(校内に寮がある)で死んだように寝るのみ。
しかし、寮に戻ると、先輩から「特別練習メニューを用意しているから寮の玄関に集まるように」との指令。
先輩「おまえ達は外から寮の玄関に入るだけでいい、入れた奴が合格だ」
私達「合格?」
先輩「よし今だぁ」
の合図で、私達は、外から玄関に突入する。
私達「うぉぉぉ〜!」
と同時に、先輩が私達に向けられた無数のロケット花火に点火する。
先輩「さばけ!心の目で見ろ」(と言ったかは不明だが、遠くで聞こえたような)
一瞬で、祭りは終わった。
髪の毛がこげた奴やジャージに穴があいた奴がいたが、偶然、私も含め数人は無傷だった。この時、私は世界一強いと確信した。(空手部はこんな奴ばっかり)
今考えると、こういう勘違いを俺達にさせるのが先輩達の目的!? メンタルトレーニング!(ありえない)
そして、勘違いをしたまま合宿が終わり、数日後の普通の練習で先輩の突きがさばけなくてへこむ。
空手部はいつもそういうのの繰り返し。
めでたし、めでたし。
|