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快便のススメ(その3)〜地獄編2〜

2007/6/5 マッチョ



あれは、4年前のまだ霜がはる2月の初め。

当時ネットワークSEだったマッチョな私は、様々なお客様先へネットワーク機器の設置作業をするひよっ子エンジニアだった。

その底冷えする寒い朝も、客先へ直行し、八王子方面の片田舎での作業をする予定だった。
その日は、夜に予定していた、趣味で参加している「マッチョサークル」の飲み会に参加すべく、新調したスーツを着ていたので、どことなくウキウキした気分で朝の電車に揺られていた。

さて、客先最寄の、田舎特有の小さな駅についたころだろうか。
その容姿・性格とは違い、おなかが人一倍“ナイーブちゃん”な私は、ふと軽い便意をもよおした。
ネットワークエンジニアであり、人より少しだけ回転の速い私の頭脳は早速計算(今までその計算はことごとく外れてきたわけだが…)し「大丈夫!! 少なくとも客先までは持ちこたえられる!!」と自身満々な解答を出したので、私は無人駅の様な小さな駅と小汚いトイレを後に田舎道を客先へと急いだ。

客先への道のりは結構遠く、坂道も多かった(ほかの路線(JR)で向かっていれば比較的近い道のりで行けたのだが、自宅の最寄路線から行くことで時間と経費をケチった)。
また、その日は前日の朝に降った雪で路面がべたつき、かつ、一度溶けた雪が再度凍ると言う最悪なコンディションであった。
思いの他電車の本数が少なかったのと、駅のトイレのコンディションを調査していた関係で、予定より少し遅れ気味だったので「少し急ぐか…」などと独り言を言いつつ営業マンと共に待ち合わせ場所に急いだ(勘の良い方はお気づきかもしれないが、営業マンが来るということは上質な客であることを意味し、それが私に無言のプレッシャーを与えていた)。

客先への道のりはやはり険しく、凍結した坂道が相次ぎ、急いでいる私をいらつかせていた。
そんな凍結坂道にもなれてきたころ、前方から年のころなら40過ぎの熟女(恥ずかしながらド・ストライク)が坂道を登ってきた。その熟女は豊満では有ったがしっかりした足取りで坂を登ってきている。
私はそちらをちらちら見ながらも慎重に坂を下りていった。しかしその熟女とすれ違ったそのとき、注意を熟女に向けたためか注意が散漫となり、不覚にも右足がつるりとすべってしまった!
私は、「ヤバイ!! なんとしてもこの美熟女の前で滑ってなるものか!!」と精一杯踏ん張り、何とかスッテンコロリンは免れた。
「フフフさすがはオレ!! 無駄にマッチョじゃないぜ!!」と思いながらも、熟女に軽く会釈し客先へ急いだ。

1〜2分歩いたころだろうか。心なしか、お尻の辺りがぬるぬるする。しかもだんだん涼しくなってきた。
「あれあれ〜。まさかまたやっちまったか〜?」とも思いつつ、被害状況を確認すべくたまたま近くにあったホームセンターのトイレに駆け寄った。「まあ、ぬるぬる度も多くないし、いくら漏れてもパンツまでは到達してないだろう」とタカをくくってパンツを下げたら、びっくりするくらいの広範囲でパンツがぬれていた!

「うっ!! さすがにこれはやばい。やばすぎる」と私は一瞬あわてたが、これまでの実績から冷静に判断しなければと、状況を整理した。

(1)パンツ(ボクサータイプ)には直径10cm程度のしみ(具はほとんどなし)。
(2)ホームセンターだが明らかにパンツは売ってない。
(3)スーツ新品(パンツ脱いだら直尻)。

「よし!! パンツのデリケート部分をトイレットペーパーで拭いて、足を入れる部分に紙をぐるぐる巻きでカバーしよう!!」と決断した私は早速実践し、営業マンの待つ客先に向かった。

幸い営業マンはおとなし目の冴えない奴だったので、私は「この凍っている道が悪いんですよ」っと明らかな逆切れを演じ文句を言わせない空気を演出した(もちろんお漏らしはナイショ)。

作業に関しては慣れたもので、お客様が進める椅子も座るのを断り、もくもくとキーボードを叩いた。
30分で作業を終わらせ、年配のお客(おじじ)が動作確認をし始めた頃、なんだか怪しい香りが鼻をついた。
「ちゃんと拭いたし、さっきまでは匂いもなかったのになぜ?」と思いながらもトイレを拝借しパンツを確認した。
確かに紙にはシミらしきものはないが明らかに香りがする…(外は寒くて匂いもさほど感じなかったが、室内に入り暖房の効いた部屋ではムンムンに香った)。
私は開き直るしか無いと思い、何食わぬ顔でお客様に作業内容を説明し、退室した。

その後の私は会社に体調不良による早退を申し出、暗い気持ちで自宅に直帰した。

当然、帰りのガラガラ電車でもつり革につかまり立って帰ったことは言うまでもない。