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空手部(その1)

2002/9/13 32TERU



私は中学高校一貫の男子校に通っていました。
これは、その男子校の中でも、「男塾」として名高い空手部に在籍していた頃のおはなし……

毎年、入学シーズンになるとどこの部活でも進入部員獲得に必死です。
とくに空手部なんかは、一般人にはなんの魅力もなく、ほぼ一年生から部活見学にきてくれるなんていうのは有り得ないことでした。
よって、毎年空手部では、「職権(食券)乱用作戦」を実施していました。

まず、空手部だとばれないように一年生に近づきます。そして「あっそう〜、まだ入る部活きめてないんだ〜」などと言い「じゃあ、昼飯でも一緒に食べようよ」(なんでだ!)と食堂に連れていきます。そして、当時110円の「すうどん」を彼にご馳走します(強引に)。

そして「君、ジャッキーチェン知ってる?」などと空手部とぜんぜん関係ない話から無理やり「空手部ってところで瓦を割ってるよ、見にいかないか?」という展開にもっていきます(この展開のテクニックは、空手部の勧誘員の先輩への恐怖心によって個人差があります)。

そして、予め道場に使いを走らせて、普段まったくしない、この時期だけ行う、瓦割りの準備をさせます。そして、一年生と勧誘員が道場につく頃には、空手部員が必死に瓦を割っている姿が目に入ってきます。ここまでが下っ端勧誘部員のお仕事です(ご苦労)。

ここからが、中堅部員の仕事です。
空手部員が必死に割ったこともない瓦を、手にあざをつくりながら必死に何枚も割っている(もちろん、痛いという顔をしてはいけない)光景を見ている一年生に、中堅が
「おっ!君、いい体格しているね!きみならきっといきなり3枚は割れるよ」
「やってごらんよ」
と、体験学習モードに切り替えていきます(今かんがえても恐ろしい)。
(この時点で、なぜかその一年のまわりが空手部員で囲まれている)
そして、一年は身の危険を感じつつ「じゃ、じゃあ」と言い、一番割れそうな瓦3枚の前に立たされます(瓦の裏には、すじが入っています、一般人なら100%割れます)。
そして、100%の確率で割れる瓦が3枚割れたの見て、部員全員がここぞとばかりに(今だぁ!)
「おお〜!! すげぇ〜!!」
そして「やっぱり、君、空手の才能あるよ」などなど「君すごいよ」の言葉を連発する。
ここで、その気になれば(すかさず入部用紙を用意)ほぼ入部決定。

しかし、もちろん、そんなお馬鹿さんばかりではないので、危険を承知で必死にその場から脱出しようと試みる一年に対しては(ここで「すうどん」がいかされる)主将が登場する。
(中高一環なので、主将は当然高校生。中学一年からみると高校生は親ぐらいにみえる)
そして、さらに見た目も怖い主将が「君、昼めし、おごってもらったんだって?」(地獄や)
(私の空手部の連れの約半数がここで落ちてます。「すうどん」で身を売った奴達)

この先はご想像におまかせします。

<最後に>
空手部の勧誘に明日はない。一年が家に帰って冷静に考えられると終わりだ。よって一日目で、いかに空手の内容にふれずに入部させるかに、すべてがかかっている。
「職権(食券)乱用作戦」新入部員獲得率 70%